諸田玲子さんの『お鳥見女房』シリーズ、第4巻まで読んでしまった。

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諸田玲子さんの『お鳥見女房』シリーズ、第4巻まで読んでしまった。

この話は、何がどう ということもなく、どこと言って さほど感動するでもなく、
要するに たいした話じゃないんだけれども、
現に、ついつい第4巻まで読まされてしまったし、
おまけに第5巻が文庫化されるのが待てなくて、【単行本】の古本を注文してしまった。

※ 昨日「発送しました」というメールが来たから、
多分 今週中には名古屋の家に着き、……家人がタイへ送ってくれるのを待つことになります。
『よろしくね~』

諸田玲子さんの小説の印象としては……、
(お!この人も1954年生まれか。一つ違いの同年配だなぁ)

先ず、

『この人は 絶対に、【ご本人が面白がりながら】書いておられる!』

と思う。

【彫・塑】で言えば、
乙川優三郎さんのような【彫り】上げる小説ではなく、
紛れもなく【塑造】派であって、
「或る人生」を彫り出したり、「史実」を明らかにしたりする方向の かたではない。

時代小説風の体裁を取りながらも、
或る【★架空の大前提】を据えた【架空の時空】で
登場人物を【★恣意的に作りだして ★恣意的に動かし】ながら 話を進める。
つまり、
かなり……妥当性、説得力、リアリティに欠ける話が多い。

例えば、『あくじゃれ』という本は、
多才な色男が 小伝馬町の牢内に留め置かれながら 牢内でウラ情報を集めつつ事件を解決する捕物帖だったりするし、
(↑ この本は、「作者のザレゴトに付き合わされている」感じがとても不快で、僕は途中で放り出した)

『天女湯おれん』は、
八丁堀の真ん中にある銭湯に隠し部屋があって、「売春夫・婦」の斡旋が行われている、という設定だったりするわけだ。
(↑ 主人公の おれんさんが生き生きしていて これは結構 楽しめた)

◆ 『お鳥見女房』シリーズも 例外ではない。
主人公一家が代々引き継いでゆく「お鳥見役」という役職が、史実としてはどういうものであったのか
実際は よくわからないらしいにもかかわらず、

諸田玲子さんは、想像の翼を広げ、
密偵】だったのでは なかろうか?という【半分架空?の大前提】の箱庭に登場人物を次々と配置して
ご自身の【空想癖?】を満喫させてゆく……。
(ご本人が 読者の誰よりも 面白がっておられるに違いない。)

それにしても……、
「仇捜し中の女剣士」と「父の仇」とが 偶然 同一の一家に【居候】を始めて
時間とともに仲良くなってゆく…………なんて、

あるわけ無いじゃんか~!


……でも……、
こういう「箱庭遊び」が許せてしまうのは、

主人公一家の中心にいる《珠世》さんが なかなか素敵な主婦だから

に他ならない。

そう そう。
この作品が他の作品とちょっとちがうのは、
コレが、何よりも先ず第一に 典型的な【ホームドラマ】である という点だろう。

登場人物の一人一人が、生まれ、育ち、成長し、悩み、戦い、昇華しながら年老いてゆく姿を
色とりどりの水引を 美しく絡ませながら 或る【思いがけなく】美しい形に持ってゆく
……ような感じで描いている【ホームドラマ】だ。
(各人の人生を肉の少ない線で描き、寄せ集めた ひとまとまり。見ように依れば、美しいスカスカ?)

しかも それが、 この本の場合、結局は全てが「良き方向」へと収斂し、

主要人物たちが何かを「あきらめる」というようなことの ほとんど無い世界でもある。


最初にも書いたとおり、この話は、

何がどう ということもなく、どこと言って さほど感動するでもなく、
要するに たいした話じゃないんだけれども、

ホームドラマとしては 出色の出来なのだ

……ろう。
つい、続きを読んでみたくなる。(あはは)

※ ただし、乙川優三郎さんの作品世界のような、
びっしり、ぴったりと張り詰められてゆくような【揺るぎない ことばの世界】があるわけではない。
ダイジェスト版、あらすじ版を造る時にも さほど苦労はない に違いない。

特に、
初めのほうの
「父が密偵の任務で何年も音信不通……」という時期のあたりの、
響き続ける重低音のような緊張感は なかなか良かったのだけれど、

第4巻ともなると、無茶苦茶《予定調和的》になって、
息子二人の縁談が一気に纏まる「ていたらく」。
めでたし めでたし。

(もちろん、結構楽しく読めているし、「不快感」までは無いのだけれど、)
『おいおい!…次男が たぶらかして一方的に利用した娘は 放っておいてエエンかい!?』
といった、『あくじゃれ』風の 恣意的な「ご都合主義」も無いわけではない。


◆ 第4巻まで読み終えた現時点では、
『おいおい、これって大団円か?このつづき、何かが 他にあり得るわけ???』という感じなので、
第5巻については、どちらかというと「つづきが楽しみ」なわけではなく、
諸田玲子さんの想像力の行く末は那辺に?』という
シリーズの内容自体からは一歩退いた「作家への興味」から
第5巻を読もうとしている次第です。


※ 名古屋のNさん、送本のほう、どうかよろしく!