最近、乙川優三郎さんの小説が気に入っております。

イメージ 1

◆ 僕は読むのが とても遅いので、せいぜい頑張っても「二日に一冊」程度なのですが、
昨日 読み終えたのは

『冬の標(しるべ)』

※ 上の[写真]をクリックすれば、文字も読めます。

いや~、良かったぁ……。
いつか 僕の棺桶には この本を入れて欲しい……、と思うくらいの読後感でした。

自分には この話の主人公ほどの「格調」や「志操」こそは無いものの、
《自分らしく生きたい!》と願いながら煩悶する彼女の気持ちは
確かに(多分、人一倍)自分にもわかるし、

◆ とにかく この乙川優三郎さんの小説の「姿」は
話の展開や心の転変が「作り事」でなく リアルなのです……。

ぐいぐい、グリグリと隙間無く石畳を敷き詰め、狂い無く石垣でも築いていく感じの文体で、
我々の人生が 日一日と過ぎ去る如くに、淡々と話が進みます。

「おもしろい」小説によくあるように作者の都合に合わせて都合良く《粘土で話を造ってゆく》のではなく、
(もちろん、そういう↑↑作品にもピンからキリまでありますが……)
乙川さんの語り口は
一本の大木から その中に《元々埋まっている「生身」を彫り出して見せてくれる》ような感じ。
そこに《在る》、《或る人生の姿そのもの》という感じなのです。

乙川優三郎さんは、奇しくも?僕と同年の1953年生まれ。
年代的にも どこか共鳴しうる一面でもあるのでしょうか。