【名犬 空(クー)を弔う】 …ラブラドール・レトリバーの可愛さを知って11年になりました。

日本の自宅にいるラブラドールの 「快(カイ)」ちゃん♀ が、 昨日で満10歳になりました


◆ おめでと~!
……とも 単純には 歓んでいられない「高齢」です。

◆ 彼女の前にウチの家族の一員だった、
同じくラブラドールの 「空(クー)」ちゃん♀ が
10年前の2月に 車に轢かれて死んだ時の
自作川柳の連作による「追悼文」を タイまで持ってきています。

ちょっとばかし長いんですけど、印字稿しかなかったので 打ち直しました。
犬好きのかたには 読んでもらえるかな?

名犬空(クー)を弔(とむら)う 第3稿 1996.2.22 健

そろそろと埋める 家族の欠けた環(かん)


  
1995年7月18日誕生、8月22日 ウチへ。体重約2㎏。
1996年2月11日 午前10時半ごろ交通事故死。

「お父さん、空(クー)が死んじゃった」と涙
留守中に逝った骸(むくろ)をきゅんと抱く
こら!空(クー)!と叱られるから吠えぬのか
重さ受けとめる「最後のウンコなの」
サンポだよ空(クー)ゴハンだよ空(クー)起きなさい
ビロードの可愛い耳を噛んでみる
いい子だったよといくら誉めても帰らない

とても楽しかったそうだね最期の日
誉められた直後に待っていた痛さ
ブレーキも踏まずに空(クー)を轢けるのか
またしても轢かれて逝ったウチの犬
空(クー)の最期を語って欲しい その車
誉めてもらおうとボールを追った空(クー)
血の付いたこんなボールが代償か
出来たはず 私に出来たはず と妻

ラブラドル・レトリーバーの家族 空(クー)
ラブなんて可愛くないと思ってた
Labrador Retriver 盲導犬にする犬種
母と娘(こ)が「試しに借りてきた」お前
小さめと言われて十七㎏(キロ)で逝く
もっともっと大きくなってゆけたよな
育て上げてやりたかったよ ほんとだよ
足しても掛けても二百九日間の生
窮屈にならずじまいのこの犬舎
子に抱ける重さで逝ってくれたのか
友達に遺したフード 二十㎏(キロ)
母も仔も知らずに逝ってしまった娘(こ)
今度飼う仔には母さん知らせるよ
ぐんぐんと育って逝ったかぐや姫
君の世話が出来ないというボディブロウ
空(クー)という魂のこと忘れない
 

  
待て!あとへ!いつも命令ばかりした
「来い」だけがいつも半端な空(クー)だった
ごめんな ごめんなといい子過ぎた仔に
血の跡を拭いてやるしかできないが
思うことみんな過去形 さようなら
思い出は形見の首輪四つ分
親娘して首輪の匂い嗅いでいる
嫁に行く娘を舐めるはずだった
新雪を選んで歩き雲の上
キュキュンキュー(I miss you)君の最後の顔でした
さよならを言われたんですね ぼくは
キュキュンキュー(I miss you)犬の嘆きは容れられぬ
こんなにも先立つ君を叱った掌(て)

お通夜の日君と一番長くいる
舌噛んだままの硬直 解いてやる
ケロッピの毛布開けては撫でてやる
子犬用ドッグフードを含ませる
いつもより元気に吠える よその犬
君はもう観ることのない いい写真
「大きくなったなぁ」も昨日と今日は別
順々に目覚めて空(クー)を呼ぶ一家
窮屈なダブルぶとんで救われる

朝食をねだる時刻の正確さ
朝食をねだられぬ朝の淋しさ
朝食をやらなくていい変な朝
朝六時 君のサイズの穴を掘る
君の死を信じるための墓を掘る
ビーデルもブーもヒューガも来てくれた
屍(しかばね)をぺろんと舐めてくれる兄(ヒュー)
泣く人が次々と来てめんくらう
皆泣いてしまって離れられなくて
かわいがって下さりどうもありがとう
君の鎖が届かなかった位置に墓
君を埋ずめて「空(クー)の花壇」を作ったよ
母さんの匂いのタオル敷いとくよ 
人形も埋める淋しくないように
噛みかけの骨っこ 君が居た印
土を掛けている頭を撫でた掌で
君の口まで沁みただろうか蜜のお湯
世界は回れ ウチは今 犬のこと
どうしよう こんな死に方させちゃって
 


◆ 娘○○(九歳)のつぶやきから拾う


  
病気でもないのに空(クー)が死んじゃった
空(クー)はもう直(す)ぐ誕生日だったのに
耳の裏 白いよ ピンク色なのに
いい天気 もっと遊べたのに空(クー)は
階段を降りて この血の跡んとこ……
もっともっともうっと遊んでやれたかも
痛かったね空(クー)足もこんなにえぐれてる
8時だね 夜のお散歩行けたのに
 


◆ その後

  
「行くぞ」から「行ってくるよ」になる散歩
一日に何度も届く君の音
餌のベル散歩の時刻攻めてくる
いつも通り小屋の雨戸も開けました
台帳を消しときます で済む役所
手付かずの仕事が溜まる君の死後
上の子は自立のための部屋で哭く
下の娘(こ)はひっきりなしに手紙書く
「おやすみ」を言いたくなって目が冴える
みぞおちが凍えたままで三日目へ
あとを追いかねない気持ち三日目へ
黄信号 酸素が足りぬ空(クー)の死後
塚の前 お前も舐めた黒ビール
花なんか目に入らない君の塚
脇見してしまうよ君を繋いだ木
おとなしく待ってた郵便局へ行く
覗いても代わりにならぬよその犬
生き返ってないかと期待する帰宅
君がいた頃は星を見て歩いた
犬を見に 犬を連れずに散歩する
立ち留まる 空(クー)が嗅いでたそこかしこ
めんどくさかった散歩の素晴らしさ
かつてより頻繁に見る君の小屋
無条件に慕ってくれた凄い奴
空(クー)の句を出すのも空(クー)と来たポスト
 

空(クー)へ

人間に踏まれるまでは白い雪   ……健